このゲームはもっと評価されても良いと思う。


 正直、サムネイルと作品ページの説明文ではゲーム性が全く分からなかったのでノータッチだった。しかし、後日レビューを見てみるとなにやら熱量を感じる文をいくつか見かけ。これはもしや遊べるゲームなのか? と思って購入してみた。結果としては大当たりだった。累計プレイ時間は実に60時間ぐらいやったと思う。同人エロゲーでここまで遊べる作品はなかなか無い。


 最初は何をすればいいか、どうすれば効率がいいのか分からなかった。配置されているイベントもどういう関係性で置いてあるのか分からずしくはく。だが、遊べば遊ぶほどにゲーム性が理解できてくる。これは上質な作業ゲームだ。効率を突き詰めていけばいくほど、夢中になれる。楽しく遊べる。そんなゲームデザイン。結局突き詰めて最高効率を求め、財宝コンプとショップアイテムコンプをして。実績コンプはさすがに大変なのでやめておいたが。あらかたこのゲームでできることはやり切った感がある。





 マップは三種類に分かれ、最初の5エリアではゴブリンの縄張り。魔石と精霊その他しか出現しない。それ以降は通常マップ。地下があって地下3階には財宝が配置されている。10エリアごとに人間の拠点に行くかどうかの分岐があり。人間の拠点は5エリア目でボスマップ。このボスマップはクリア後に探索できるようになり、それまでは襲撃じゃないと捕まえられなかったボスを普通に捕まえられるようになる。襲撃の時、報告のキャラがマップを歩く演出がちょい長いなーと思ってたが、クリア後にこのマップ自体が探索対象になるのであれば納得だ。


  マップもよくできてる。一画面に入る大きさで、コンセプトを感じさせる。冒険者たちの酒場なのかな、というマップとか。魔法使いの研究所なのかな、という地下マップとか。各人間の拠点も見ていて楽しい。雰囲気だけだけど、このマップはたぶんこういうイメージで作られてるんだろうな、というのが感じられる。それがじつに目に楽しい。





 このゲームには無駄な要素が一切無い。すべてが最終的にゴールドやエナジーみたいな数値となり、それらをショップの買い物やら各施設の強化にて使用することになる。全部の数字が、自キャラや自分の持つ要素のレベル上げにつながっている。作業ゲームにおける理想形である。


 探索もそうだ。とにかく魔石や道具を集め、集めたそれらで人間の拠点や地下の財宝を集める。それらを集めていけば、ボーナスが増えたり初期エナジーやゴールドが増えたり。それを繰り返して探索フロア数をじわじわと伸ばしていく。探索と強化のサイクルが綺麗につながっているのだ。それがじつに楽しい。やればやるほどに効率が良くなり、より多くのフロアを進められるようになる。それはただの自己満足。だが、実績部屋でその軌跡は確認でき。それを見てプレイヤーは自己陶酔に浸る。ゲームというのはそういう楽しみ方もあっていい。自分の努力が数字となり、その数字が記録され、プレイするたびに増えていく。それに楽しみを見出すプレイヤーというのは、いるのだ。





 ただ、もったいない部分もある。このゲームはゲーム性こそ秀逸だが、レベルデザインに失敗している。どの部分かというと、最序盤。探索から戻ってきても数100ゴールドしか入手できない時期がしばらく続く。だが、ショップで売ってる強化要素の買値の下限が1000ゴールドなのだ。これに尽きる。これがこのゲームの最大の失敗点である。


 ゲーム序盤というのは、自分の前進が明確に感じられなければならない。何故なら、変化が感じられないと人間は楽しさを感じられないからだ。こういうゲームはある程度進めると数字がある段階で急激に増加するタイミングがある。だからこそ、ある程度強化要素の値段は高めに設定してあるのだというのは分かる。……だが、特に現代のプレイヤーというのはゲームをする時間もあまりない。だから、最初のハードルを高くし過ぎると、それを越えられずにやめてしまうのだ。そして、面白くないゲームという評価になってしまうのである。


 じゃあ、何が悪かったのか。私が考えるに、このゲームの強化要素の値段設定を加算にしてしまったからだろう。1000ゴールドの次は2000ゴールド、その次は3000ゴールド……という具合に数字が増えていくのだが。1000ゴールド稼げる人というのは5000とか10000とかわりかし一瞬で稼げてしまう。だから、一番きついのが最初の1000ゴールドであって、そのあとはほぼ消化試合である。それゆえに、この数字の増え方では、ただただ最初がきついだけで、中盤以降は本当にただの作業になる。ゆえに、序盤で折れてしまう人が続出するのだ。


 私は、ここを乗算にすればよかったと思う。どういうことかというと、2の2乗の増え方にすればいいのだ。たとえば、最初の値段を100ゴールドにして。その次が200ゴールド。その次が400ゴールド。その次が800、1600、3200……という風に増やし。最終的に2の10乗で102400ゴールド。これなら、序盤に折れるプレイヤーはかなり減るだろう。後半がちょっと増えすぎかなとは思うけど、まあそこまで遊ぶ人間だったら最大レベルの強化の値段が10万越えようがあんまり気にしない。1000以上はどんだけ増えようが誤差である。中盤まで数字を増やせる人間は、後半でも無心で数字を増やし続けることができる。だからこそ、ケアすべきは一番最初。プレイ開始当初のプレイヤーの心が折れないように、ハードルを低くしてあげる必要があったのではないか。


 この部分さえちゃんとしていれば、このゲームの評価はもっと高かったと思う。レビューだってもっと柔らかいものが増えたはずだ。一回投稿されたレビューって消えないので。わりと印象が固定されちゃうんだよね。アプデ情報でかなり改善されたんだな、ってのを見ればわかるけど。そこまで見る一見さんってなかなかいないからね。このゲームはレベルデザインで大きく損をしている。





 私は作業をするゲームが好きだ。大好きだ。クリアのためにゲーム内容が作業になるゲームじゃなく、ゲーム性自体が作業でありそれらすべてが自キャラやスコアにつながるようなゲームが心の底から大好きだ。このゲームはそんなゲームだった。


 ゆえに、立山ビン太郎はこのゲームを殿堂入り認定します。面白いゲームをありがとうございました。……あ。ヌけるかヌけないかというと、まあ正直あんまりって感じ。エロ自体は淡白だからね。ただ、ゲームは楽しいから別に気にならんね。